
「酵素ダイエットで必ず痩せる!」、「酵素パワーで免疫力アップ!」などの謳い文句と共に、酵素が身体に及ぼす影響力が大いに強調されている今日この頃です。
ですが、一口に「酵素」といってもその種類は多種多様であり、酵素を効率的に摂り込むためには正しい知識が必要です。
「酵素」は触媒(特定の化学反応の速度を速め、それ自身は反応の前後で変化しないもの)として働くタンパク質のことで、「消化酵素」と「代謝酵素」の二つの種類に大きく分けられます。
「消化酵素」は、摂取した栄養素を分解し、体に吸収しやすくする酵素。
「代謝酵素」は、吸収した栄養素をエネルギーにする酵素です。
我々を含め、生物には酵素が重要な触媒として作用し、欠かせない物質です。
例えば……
パイナップルや舞茸に含まれる「プロテアーゼ」という酵素は、タンパク質を分解し、身体に吸収しやすくします。
納豆に含まれる「ナットウキナーゼ」にもプロテアーゼが含まれており、血栓を溶解します。
また、微生物が数々の酵素を組み合わせ(触媒反応)、糖からアルコールを合成することを発酵と呼びます。
このように、有効利用すれば大変に役立つ「酵素」ですが、その働きを阻害したり、大量消耗してしまう物質があるのはご存知でしょうか。
酵素の働きを阻害してしまう主な物質には、「砂糖(ショ糖)」、「食品添加物」、「薬(主に西洋薬)」、「古い(酸化した)油」などが挙げられます。
また、植物や魚から取った油を精製する工程で微量に含まれる「トランス脂肪酸」は、本来は食品から摂る必要はないと考えられており、過剰摂取することで健康に悪影響を及ぼすと言われます。
「トランス脂肪酸」は、マーガリン、パン、ケーキ、ドーナツなどの加工食品にも含まれています。
ショ糖(二糖類)
お菓子や料理には、砂糖が用いられます。
テレビの料理番組で、甘いお菓子やプリンに大量投入している光景をよく見かけることでしょう。
「砂糖(ショ糖)=グルコース(ブドウ糖)+フルクトース(果糖)」です。
「ブドウ糖」と「果糖」は単糖類。
単糖同士がくっついたものなので、二糖類とも呼ばれます。
単糖類は糖質の最小単位なので体内に吸収されやすく、栄養分としても重要な役割を果たします。
口から入った食べ物を消化する際、欠かせないのが酵素の働きです。
砂糖(ショ糖)が小腸に至ると、小腸の絨毛の先端から「スクラーゼ」という酵素が出て、吸収する直前に、二糖類の「砂糖(ショ糖)」を、「ブドウ糖」と「果糖」に分解します。
二糖類をわざわざ単糖にしてから吸収するという手間が、すんなりと吸収される単糖類と比べ、いかに酵素を大量消費するかがおわかりでしょう。
また、人間の胃は1分間に約3回のペースで動いており、胃の中に角砂糖の1/4~1/5個程度の糖が入るだけで、数十秒間も胃の動きが完全静止することが東京大学の実証試験でわかっています。
砂糖(ショ糖)の大量摂取をすれば、結果として胃の働きが停滞し、消化不良を引き起こし、腸内環境を悪化させかねません。
腸内細菌(善玉菌・悪玉菌・日和見菌)のバランスが大きく崩れて悪玉菌が増加することで、腸内腐敗が進行することになるのです。
また、糖分を過剰摂取すると細胞の動きが緩慢になり、血液粘度が上がり、血流の流れが悪くなるため、静脈等に老廃物が蓄積します。
血液が汚れれば、あらゆる病の温床となり得ます。
また、砂糖(ショ糖)の過剰摂取により、健康な細胞を錆びつかせる「活性酸素」が生じると言われます。
血液を酸化させ、血糖値を急激に上昇させ、身体を冷やして代謝低下を誘引する、とも言われます。
これは体内の老化スピードを速めることにほかなりません。
真っ白に精製された砂糖(ショ糖)は、原料由来のミネラル、ビタミンは全て削ぎ落とされており、「結局は食品添加物だ」と言う人もいるほどです。
勿論、「食品添加物」が酵素阻害物質であることは間違いありません。
甘い物が大好物の方でも、砂糖(ショ糖)の「過剰摂取」は控えたほうが無難です。
また、「酵素」を使った食品の中には白砂糖を使用したものもあるでしょう。
どうしても心配な方は、白砂糖不使用のものを選ぶと良いでしょう。
西洋薬(抗生物質、鎮痛剤、胃薬など)
体調が悪い時や病気の時に何気なく飲んでいる常備薬や、医師からの処方薬には、「抗生物質」、「鎮痛剤」、「胃薬」などが挙げられます。
抗生物質
「抗生物質」は、「微生物が産生し、ほかの微生物の発育を阻害する物質」です。
病原体を殺し、体内代謝などを正常化するため、医薬品として利用されるものも多いです。
人体の細胞にはほぼ毒性を示さず、細菌特有の細胞壁合成を阻害し、細菌増殖を抑えます。
困った事には、病原性を示さない細菌にも作用し、多量に使用すれば体内の常在菌バランスが崩れます。
それにより、ほかの細菌や、カビなどの爆発的繁殖を煽る危険性もあります。
また、抗生物質を投与しても死なずに長期間生き延びる多くの菌が現れます。
それらの菌には、抗生物質の効果を高める「酵素」がほとんど無かったそうです。
例を挙げれば、結核患者に抗生物質を投与しても遅々として良くならない場合、「たまたま『酵素』ができにくい菌が一定確率で現れるため」と考えられます。
鎮痛剤
「鎮痛剤(頭痛や歯痛、生理痛等に効く)」は、痛みに対して鎮痛効果を持つ医薬品の総称で、中枢神経系や末梢神経に作用します。
体内で組織が損傷を受けた時、「酵素」の働きにより、炎症によって生じる痛みを強くする作用を持つ物質が作られます。
この「酵素」の働きを「阻害」し、炎症と痛みを抑えるのが「消炎鎮痛剤」の役割です。
よく知られている例を挙げれば「ロキソニン」、「ボルタレン」等があり、首の痛み、膝や腰の関節痛、頭痛等に用いられます。
最も起こりやすい副作用は胃腸症状です。
長期間服用し続けると、胃痛や胃炎、更には胃潰瘍の副作用が考えられます。
胃薬
「胃薬」にも様々なタイプがあります。
食欲が無い時には、胃粘膜を保護する胃薬を。
暴飲暴食した翌朝に、起きて吐き気がする時には、胃酸を中和する胃薬を。
食後膨満感には、食べ物の分解を促し、胃の運動を促す胃薬を。
ご自身の胃腸の状態を把握してから飲みましょう。
例えば、胃酸の少ない人が胃酸過多だと勘違いして胃酸の分泌を抑える胃薬を飲み続けた場合、かえって消化不良がひどくなることも有り得ます。
胃腸薬には「消化を促進してくれる酵素」が含まれているものが多々あります。
サプリで重複して酵素を摂るより、薬を優先させた方が良いでしょう。
とはいえ、胃薬に頼りたくないという方は、消化不良が悪化して苦しむ前に、できれば自然に治す試みをしたいものです。
消化機能が弱っているのであれば、「生きた酵素を含む味噌汁」など、胃に優しい食材で栄養を摂り込むなり、食べ過ぎであれば、半日の断食などを行い、消化器官を休ませるなどの方法が考えられます。
いずれにせよ、人工的に生成された薬は自然の産物ではありません。
強い薬ほど、体内酵素の働きを阻害する物質になり得ると言えましょう。
食品添加物
「食品添加物」とは、「食品の加工製造過程で、品質の改良や保存性、及び風味や外観の向上のために添加される物質」と定義されています。
食品衛生法に基づき、人への健康が損なわれるおそれの無い物に限り、厚生労働省が成分規格や使用基準を定めたうえで、使用を認めています。
「食品添加物」には、合成添加物と天然由来の添加物があります。
一般的な日本人は、1年に4キロ程度の食品添加物を口にしているとか。
外食やファーストフード、加工食品で食事を済ませる人は、その3倍弱の11キロ程度も口にしているのだとか。
厚生省が安全に留意して使用許可を出している、とはいうものの、「カット野菜の切り口がいつまでも変色せずに綺麗なままなのはなぜだろう?」とか、「くすんだレンコンは、食品用漂白剤で漂白し、真っ白にしてから出荷している?」とか、「かまぼこのピンク色の部分は、実は虫由来の着色料?」とか……いちいち気になりだしたら、心穏やかに過ごせません。
実のところ、食品添加物の中には、国の基準では問題がないとされているにも関わらず、発がん性や健康被害が指摘される物も多いのです。
発色剤や合成保存料、酸化防止剤等です。
発色剤で例を挙げれば、
- 赤色102号は発がん性が指摘され、北欧では禁止されている。
- 黄色4号は、蕁麻疹の原因になる。
などです。
「食品添加物」は発がん性の指摘のみならず、「酵素の働きを阻害」します。
阻害されるため、分解するために大量の酵素が消費されます。
また、「食品添加物」によって酵素が変性する、ミネラル吸収を妨げるなどの多くの弊害を伴うと言われます。
生きた酵素を摂り込み、体内の酵素の大量消費を防ぐには「食品添加物」の少ない食品を選んで口にするのが良いでしょう。
普段から、食品の原材料をこまめに確認し、できるだけ「食品添加物」の摂取量を減らしていくことも健康被害を防ぐために大切ですよね。
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